犬の膿皮症 症例紹介 - アレルギー性皮膚炎の併発・治療

犬の膿皮症 症例紹介 - アレルギー性皮膚炎の併発・治療

2024/06/23

本記事では、3歳のフレンチブルドッグが膿皮症を克服した具体的な治療例を紹介します。

フレンチブルドッグはその愛らしい顔立ちと愛らしい性格で多くの家庭で愛されていますが、皮膚のトラブル、特に膿皮症は頻繁に見られる問題です。

また、膿皮症の原因や症状、そして再発を防ぐための効果的な対策と予防法について詳しく解説します。飼い主として、愛犬の健康を守るために必要な知識を身につけましょう。


症例概要

患者情報

  • 犬種: フレンチブルドッグ

  • 性別: メス

  • 年齢: 3歳

  • 体重: 11kg

主訴

  • 1ヶ月前からの皮膚の赤みと膿疱、激しいかゆみ

既往歴

  • 食物アレルギーあり(鶏肉)

生活環境

  • 屋内飼育、他のペット(猫)1匹

フィラリア予防

  • 実施

ノミ・ダニ予防

  • 実施


発症経緯と初診時の観察

飼い主様は、1ヶ月前から愛犬の皮膚に赤みと膿疱が現れ、特に夜間にかゆみがひどくなっていると訴え来院しました。これにより、頻繁に体を掻きむしり、毛が薄くなり始めていました。

身体検査
全身の皮膚に赤みと膿疱が見られ、特に腹部、内股、首周りが顕著でした。耳、目、鼻、口腔内には異常はありません。体温、脈拍、呼吸数は正常範囲内であり、被毛は部分的に薄く、掻痒による傷跡が多数認められました。

皮膚スクレーピング検査
寄生虫の存在は確認されませんでした。

細菌培養検査
膿疱から採取したサンプルを培養した結果、Staphylococcus pseudintermediusが検出されました。

アレルギー検査
既存の食物アレルギーに加え、新たにハウスダストと花粉に対する過敏反応が見られました。


診断

これらの検査結果に基づき、フレンチブルドッグの膿皮症と診断しました。膿皮症は皮膚のバリア機能が低下し、細菌感染が引き起こされる皮膚感染症であり、特にアレルギーを持つ犬では発症リスクが高いです。


治療計画

  1. 抗生物質の投与

    • 内服薬: クロラムフェニコル 25mg/kg 1日2回、21日間投与。

    • 外用薬: 抗菌薬入りシャンプー(クロルヘキシジン)を週2回使用。

  2. 痒み止め

    • 内服薬: オクラシチニブ(アポキル) 0.4mg/kg 1日2回、4週間。その後、1日1回に減量。

  3. 食事管理

    • 低アレルギー食: 食物アレルギー対応の療法食に変更。


経過観察とフォローアップ

1週間後
皮膚の赤みが軽減し、膿疱の数も減少。かゆみも徐々に緩和されている。抗生物質と抗炎症薬の効果が見られ、症状は改善傾向にあります。

3週間後
皮膚はほぼ正常に戻り、被毛も再生し始めました。膿疱は完全に消失し、かゆみもほとんど見られません。治療は継続しつつ、食事管理とスキンケアを徹底するよう指導しました。

6週間後
症状の再発は見られず、健康状態も良好です。食物アレルギーに対する対応食とアレルギー対策を続けることが重要です。


飼い主様へのアドバイス

膿皮症は再発しやすいため、日常的なスキンケアと食事管理が欠かせません。

特にアレルギーを持つ犬の場合、定期的な獣医師の診察と環境管理が重要です。

また、かゆみや皮膚の異常が見られた場合は、早期に対応することで症状の悪化を防ぐことができます。


考察

膿皮症は特にアレルギー体質の犬に多く見られ、適切な治療と管理が不可欠です。本症例では、早期の診断と適切な抗生物質および抗炎症薬の使用が功を奏し、短期間で症状の改善が見られました。

再発防止には、飼い主様の協力が重要であり、日常的なスキンケアと食事管理を徹底することが求められます。


今後の対策

  1. 定期的な皮膚チェック
    膿皮症の再発防止のため、定期的な皮膚の状態チェックを行います。

  2. 予防的なスキンケア
    日常的に皮膚を清潔に保ち、保湿剤の使用などで皮膚のバリア機能を維持します。

  3. アレルギー対策
    低アレルギー食を継続し、アレルギーの原因となる物質を避けます。

  4. 環境管理
    犬の生活環境を清潔に保ち、ストレスを軽減することで免疫力を向上させます。

飼い主様が適切な知識を持ち、日常的なケアを行うことで、犬の健康を維持し、再発を防ぐことができます。

動物医療センターPeco

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