2024/06/23
症例概要
患者: パグ、オス、5歳
主訴: 3週間前からの皮膚の発赤、膿疱、かゆみ
既往歴: 特記事項なし
生活環境: 屋内飼育、他のペットなし
予防接種: 最新
フィラリア予防: 実施
ノミ・ダニ予防: 実施
初診時の様子と検査
身体検査: 全身の皮膚に多発する膿疱、痂皮、および発赤が認められました。特に腹部、内股、首回りに集中しています。耳、目、鼻、口腔内に異常は認められず、体温、脈拍、呼吸数は正常範囲内です。
皮膚スクレーピング検査: ダニや寄生虫の存在は認められませんでした。
細菌培養検査: 皮膚の膿疱から採取したサンプルを培養した結果、Staphylococcus pseudintermediusが検出されました。
細胞診検査: 膿疱の内容物を細胞診で確認したところ、多数の好中球が認められました。
診断
以上の結果から、犬の膿皮症と診断されました。膿皮症は、皮膚のバリア機能が低下し、細菌が感染することで発症する皮膚病です。主な原因は、皮膚の擦り傷、アレルギー、寄生虫、ホルモン異常など多岐にわたります。
治療計画
抗生物質の投与:
内服: セファレキシン 22mg/kg 1日2回、14日間投与
外用: 抗菌薬入りシャンプー(クロルヘキシジン)を週2回使用
スキンケアの指導:
定期的なブラッシングとシャンプー
乾燥肌を防ぐための保湿剤の使用
食事管理:
アレルギー対策として、低アレルギー食への変更
経過観察と治療効果
治療開始後1週間目、皮膚の発赤と膿疱は顕著に改善し、かゆみも減少しました。治療2週間後には、膿疱はほとんど消失し、皮膚の状態は正常に戻りました。抗生物質投与終了後も再発防止のため、定期的な皮膚チェックと適切なスキンケアを継続するよう指導しました。
飼い主様へのアドバイス
膿皮症は再発しやすいため、日常的なスキンケアと定期的な獣医師の診察が重要です。また、かゆみや皮膚の異常が見られた場合は、早期に対処することが必要です。
考察
膿皮症は、犬の皮膚病の中でも比較的よく見られる感染症であり、適切な診断と治療が不可欠です。
治療には、効果的な抗生物質の選択とその投与期間の遵守が重要です。さらに、基礎疾患や環境要因を考慮した包括的なアプローチが求められます。
今回の症例では、セファレキシンを使用した抗生物質治療が奏功し、早期に症状の改善が見られました。
今後の対策
定期的な皮膚チェック: 膿皮症の再発防止のため、定期的な皮膚の状態チェックを行います。
予防的なスキンケア: 日常的に皮膚を清潔に保ち、保湿剤の使用などで皮膚のバリア機能を維持します。
アレルギー対策: 低アレルギー食を継続し、アレルギーの原因となる物質を避けます。
環境管理: 生活環境を清潔に保ち、ストレスを軽減することで免疫力を向上させます。
膿皮症の治療と予防には、飼い主様の協力が欠かせません。適切な知識を持ち、日常的なケアを行うことで、愛犬の健康を維持し、再発を防ぐことができます。