2024/06/23
シーズーはその魅力的な見た目と愛らしい性格で多くの人々に愛されていますが、皮膚の問題、特にマラセチア皮膚炎に悩まされることがよくあります。
本記事では、4歳のシーズーがマラセチア皮膚炎を克服した具体的な治療例を紹介します。
また、マラセチア皮膚炎の原因や症状、そして再発を防ぐための効果的な対策と予防法について詳しく解説します。飼い主として、愛犬の健康を守るために必要な知識を身につけましょう。
症例概要
患者情報
犬種: シーズー
性別: オス
年齢: 4歳
体重: 7kg
主訴
2ヶ月前からの皮膚の赤み、痒み、べたつき、異臭
既往歴
食物アレルギー(牛肉、鶏肉)
生活環境
屋内飼育、他のペットなし
フィラリア予防
実施
ノミ・ダニ予防
実施
発症経緯と初診時の診察
飼い主様は、2ヶ月前から愛犬の皮膚に赤みと痒みが現れ、特に耳周りと腹部にべたつきが見られると訴えて来院しました。また、独特な臭いも感じられ、体を頻繁に掻きむしるようになったとのことでした。
身体検査
全身の皮膚に赤みと脂性のべたつきが見られ、特に耳周り、腹部、内股、足の間が顕著でした。耳道には茶色の耳垢があり、耳介には炎症が見られました。体温、脈拍、呼吸数は正常範囲内でした。
皮膚スクレーピング検査
寄生虫の存在は確認されませんでした。
細胞診検査
皮膚の鱗屑から多量のマラセチア酵母(Malassezia pachydermatis)が認められました。
診断
これらの検査結果に基づき、シーズーのマラセチア皮膚炎と診断しました。マラセチア皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下し、マラセチア酵母が異常増殖することで発症する皮膚真菌症です。特にアレルギーを持つ犬では、発症リスクが高まります。
治療計画
抗真菌薬の投与
内服薬: イトラコナゾール 5mg/kg 1日1回、3週間投与。
外用薬: 抗真菌薬入りシャンプー(クロルヘキシジンとミコナゾール配合)を週2回使用。
塗り薬: ケトコナゾールクリームを患部に1日2回塗布。
抗炎症薬の投与
内服薬: プレドニゾロン 0.5mg/kg 1日1回、10日間。その後、症状に応じて減量。
耳の治療
洗浄剤: 耳の洗浄液で耳道を清潔に保つ。
点耳薬: 抗真菌薬入りの点耳薬を1日2回、2週間使用。
スキンケアの指導
定期的なブラッシングと抗真菌薬シャンプーの使用。
乾燥肌を防ぐための保湿剤の使用。
食事管理
食物アレルギー対応の療法食に変更。
経過観察とフォローアップ
1週間後の経過
皮膚の赤みが軽減し、べたつきも減少。かゆみも徐々に緩和されている。抗真菌薬と抗炎症薬の効果が見られ、症状は改善傾向にあります。
3週間後の経過
皮膚はほぼ正常に戻り、べたつきも消失。耳の炎症も改善し、耳垢の量が減少しました。治療は継続しつつ、食事管理とスキンケアを徹底するよう指導しました。
6週間後の経過
症状の再発は見られず、健康状態も良好です。食物アレルギーに対する対応食とアレルギー対策を続けることが重要です。
飼い主様へのアドバイス
マラセチア皮膚炎は再発しやすいため、日常的なスキンケアと食事管理が欠かせません。
特にアレルギーを持つ犬の場合、定期的な獣医師の診察と環境管理が重要です。また、かゆみや皮膚の異常が見られた場合は、早期に対応することで症状の悪化を防ぐことができます。
考察
マラセチア皮膚炎は特にアレルギー体質の犬に多く見られ、適切な治療と管理が不可欠です。
本症例では、早期の診断と適切な抗真菌薬および抗炎症薬の使用が功を奏し、短期間で症状の改善が見られました。再発防止には、飼い主様の協力が重要であり、日常的なスキンケアと食事管理を徹底することが求められます。
今後の対策
定期的な皮膚チェック
マラセチア皮膚炎の再発防止のため、定期的な皮膚の状態チェックを行います。予防的なスキンケア
日常的に皮膚を清潔に保ち、保湿剤の使用などで皮膚のバリア機能を維持します。アレルギー対策
低アレルギー食を継続し、アレルギーの原因となる物質を避けます。環境管理
犬の生活環境を清潔に保ち、ストレスを軽減することで免疫力を向上させます。
飼い主様が適切な知識を持ち、日常的なケアを行うことで、犬の健康を維持し、再発を防ぐことができます。