犬のアトピー性皮膚炎について:様々な治療法について(ステロイド・アポキル・サイトポイント)

犬のアトピー性皮膚炎について:様々な治療法について(ステロイド・アポキル・サイトポイント)

2024/06/18

犬のアトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis、AD)は、愛犬の飼い主様にとって厄介な問題となることが多い疾患です。アトピー性皮膚炎は、愛犬の遺伝的素因による慢性的な炎症性および痒みを伴う皮膚疾患であり、適切な診断と管理が求められます。この記事では、愛犬のアトピー性皮膚炎の原因、症状、診断、治療法について詳しく解説します。


アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎の主な原因は、環境中のアレルゲンに対する過敏な免疫反応です。これには、花粉、ハウスダスト、カビ、動物のフケなどが含まれます。アトピー性皮膚炎は、特定の犬種に多く見られ、遺伝的要因が強く影響しています。

例えば、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、フレンチブルドッグなどがその一例です。

統計によると、アトピー性皮膚炎は全愛犬の約10〜15%に発生し、特に1〜3歳の若年愛犬に多く見られます。

また、都市部に住む愛犬において発症率が高い傾向があります​​。

さらに、特定の犬種においては発症率がより高く、例えばウェストハイランドホワイトテリアでは50%以上の愛犬が何らかの形でアトピー性皮膚炎を発症することが報告されています。


アトピー性皮膚炎の症状

アトピー性皮膚炎の症状は多岐にわたり、以下のようなものがあります。

  • 痒み: 最も一般的な症状で、愛犬はしばしば体を掻いたり、噛んだり、舐めたりします。

  • 発赤と炎症: 皮膚が赤くなり、炎症を起こします。

  • 皮膚の厚みと硬化: 慢性的な掻き壊しにより、皮膚が厚くなり、硬くなることがあります。

  • 脱毛: 痒みの結果として、毛が抜けることがあります。

  • 二次感染: 皮膚バリアが壊れることで、細菌や酵母菌の二次感染が発生しやすくなります。


アトピー性皮膚炎の診断方法

アトピー性皮膚炎の診断は、他の皮膚疾患を除外することから始まります。以下のような診断方法があります。

  • 問診と身体検査: 症状の歴史や家族歴を含む詳細な問診を行い、身体検査で皮膚の状態を確認します。

  • アレルギー検査: アレルゲンを特定するために、血清IgE検査を行う場合がありまsす。

  • 除去食試験: 食物アレルギーを疑う場合は、特定の食物を除去し、その後再導入することで反応を観察します​​。


アトピー性皮膚炎の治療法

アトピー性皮膚炎の治療は、多角的なアプローチが必要です。以下に主な治療法を紹介します。


アレルゲン回避

アレルゲン回避は、環境中のアレルゲンを特定し、可能な限り避けることが重要です。例えば、ハウスダストや花粉の対策として空気清浄機の使用や頻繁な掃除が推奨されます。


薬物療法

薬物療法には以下のような選択肢があります。

  • 抗ヒスタミン薬: 痒みを軽減するために使用されますが、すべての愛犬に効果があるわけではありません。

  • ステロイド: 強力な抗炎症作用がありますが、長期使用は副作用のリスクがあるため注意が必要です。ある研究では、ステロイド治療を受けた多くの愛犬のは痒みの軽減が認められますが、長期使用に伴う副作用として、皮膚の薄化、感染症のリスク増加、体重増加、糖尿病などが挙げられます​​。

  • シクロスポリン・アポキル: シクロスポリンやオクラシチニブ(商品名アポキル)などが使用されます。アポクエルは、愛犬の痒みを効果的に抑える薬剤として広く使用されており、臨床試験では70%以上の愛犬で症状の著しい改善が見られています​​。

  • モノクローナル抗体: ロキベトマブ(商品名サイトポイント)は、愛犬のIL-31という痒みの原因となるサイトカインをターゲットにした治療法で、高い効果が報告されています。臨床試験では、ロキベトマブを使用した愛犬の57.7%が28日以内に痒みの軽減を経験し、副作用も少ないことが確認されています​​​​。


スキンケア

スキンケアは、アトピー性皮膚炎の管理において重要な要素です。

  • シャンプー: 定期的なシャンプーは皮膚の清潔を保ち、症状の緩和に役立ちます。アトピー性皮膚炎の愛犬には、以下のような特別なシャンプーが推奨されます。

    • 低刺激性シャンプー: 皮膚への刺激を最小限に抑えるために、低刺激性のシャンプーを使用します。これにより、皮膚のバリア機能が損なわれるリスクが減ります。

    • 薬用シャンプー: 抗菌・抗真菌成分を含む薬用シャンプーは、二次感染を防ぐのに役立ちます。特に、マラセチアや細菌感染が疑われる場合に有効です。

    • 保湿シャンプー: 乾燥した皮膚を保湿し、痒みや炎症を和らげるための保湿成分を含むシャンプーを使用します。

  • 保湿剤の使用: シャンプー後には保湿剤を使用し、皮膚のバリア機能を補強します。


食事管理

食事管理は、食物アレルギーが疑われる場合に重要です。特定のアレルゲンを含まない食事を提供することで、症状の緩和を図ります。


飼い主様へのアドバイス

飼い主様の協力は、アトピー性皮膚炎の管理に不可欠です。以下のポイントを参考にしてください。

  • 定期的な獣医師の診察: 症状の変化や治療の効果を確認するために、定期的に獣医師の診察を受けましょう。

  • ホームケアの実施: 獣医師の指示に従い、適切なシャンプーや保湿剤の使用を継続してください。

  • 環境の整備: アレルゲンの除去や減少に努め、愛犬が快適に過ごせる環境を整えましょう。


まとめ

愛犬のアトピー性皮膚炎は、適切な診断と治療で症状をコントロールすることが可能です。

飼い主様としては、獣医師と協力しながら、日々のケアを怠らないことが重要です。愛犬が快適な生活を送れるよう、正しい知識と対策を身につけてましょう・


動物医療センターPeco

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